サクラ

東海地方のサクラの実態を調査しています。修士課程時のテーマとして研究をはじめました。

霞間ヶ渓のサクラ

  霞間ヶ渓(かまがたに)は、昭和3年に天然記念物・名勝に指定された、岐阜県池田町に位置するサクラ群生林です。霞間ヶ渓は、ヤマザクラとエドヒガンの種内変異が豊富であることが貴重なのですが、現在では、人の手により植えられたソメイヨシノなどが多く、天然記念物として適切な保全を行う必要がありました。

 詳細な種同定と来歴調査を行った結果、自生のヤマザクラとエドヒガンは全体の3割にとどまり、1950年代に植えられたソメイヨシノが最も多く生育していました。加えて、1990年代にヤマザクラとして購入したはずの個体が、別のサクラ(多くは雑種と見られる)であったことも明らかになりました。自生と見られるサクラの中には、葉が紅色なヤマザクラや、花弁に赤みを帯びるエドヒガンなど、多くの種内変異をもつことも確認されました。今後、これらのサクラを中心に保全していく必要性を提言しました。

関連業績

伊藤ほか(2020)ヤマザクラ・エドヒガン群生地の名勝及び天然記念物・霞間ヶ渓に生育するサクラ亜属植物の種組成と来歴.保全生態学研究.